◆危険です!名前を伏せて勧誘活動をおこなっている新宗教(2)
①エホバの証人(ものみの塔聖書冊子教会、王国会館)
アメリカ ニューヨーク州に本部を置く世界的な組織です。輸血を拒否する独特の生命観を持つことで有名です。活動としては、独特で上品なファッションに身を包んだ男女や、子ども連れがアポ無しで訪ねて来て、『ものみの塔』とか『めざめよ!』というタイトルの冊子を配布しています。冊子は無料ですが、読んでみても共感できないというか、私にはほとんど意味が分かりませんでした。宝林寺にも以前はよく来られ、時間のある時に少しお話を聞いたら、何度も訪ねて来るようになってしまったことがあります。しつこく勧誘をするわけでもなく、冊子を配るだけなので、それだけなら特に危険な感じはしないかもしれません。
しかしこの団体が問題だと思うのは、学生をターゲットにした、教団の名前を出さない偽装サークル勧誘です。私は京都で学生時代に一人暮らしをしていたのですが、ある時、見知らぬ若い女の人がアパートに尋ねて来て「学生さんですか?いろんな大学から有志が集まって人生について一緒に勉強するサークル活動をしているんですが、よかったら一度私たちのクラブへ見学に来ませんか?」と誘われました。その時はバイト前で時間がなく断ったのですが、ちょっと優しそうなお姉さんだったので(笑)、また会う約束をしてその時は帰しました。
後日、そのお姉さんと、もう一人サッパリとした感じの好青年が一緒に訪ねて来て、彼の運転する車で「王国会館」と書かれたテナントの一室に行きました。(その当時はエホバの証人という宗教団体だということは知りませんでした。)その時、お茶菓子代として500円払いました。(無料でなく少額でも自分で支払うというのも、主体的に自分で選んだという意識になるように、何か計算されている気がします。)
部屋にいた3~4人の学生と一緒にお茶とお菓子をつまみながらお互い自己紹介をしました。学校は京都産業大学、同志社、立命館とみんなバラバラで、「学校を超えた友だちができるし、人生について一緒に勉強する楽しい集まりですよ」などと言われ世間話などをした後、大学教授のような人が出演している自己啓発もののようなビデオを見せられました。「夏には、2泊3日とか1週間の合宿があるから、より親密な付き合いができますよ。一緒に参加しませんか?」と誘われましたが、ビデオの内容にどうも共感できなかったのできっぱりと断ったので、この人たちとはそれ以降、会うことはありませんでした。その後、彼らからしつこく付きまとわれたりということもありませんでした。
この一件では、幸い特に何か被害を受けたわけではありません。でもちょっと条件が変わっていたら私もサークルのメンバーになっていたかもしれないと思うのです。私の場合、たまたま大谷大学で仏教を学んでいたので、ある程度、宗教的なことに対して免疫ができていたのかもしれません。ビデオの内容はもう覚えていませんが、見せられてもまったく響くところがなく、一緒にビデオ鑑賞をした他の方たちに対して、批判的な物言いをしていた記憶があります。
以前、藤場俊基先生が、カルト教団によるマインドコントロールが社会問題としてニュースでよく取り上げられていた頃、「すでに宗教を持っている人には、宗教のワクチン効果ともいえる作用があるのではないか」と言われていたのを思い出します。宗教とは何を問題とし、どういう利益(りやく)がもたらされるものなのか、そういう枠組みがある程度分かっていれば、たとえば「超能力で空中浮遊できる」とか、「この宗教を信じる者は死んだ後でも死後硬直しない。これが成仏の何よりの証拠だ!」など荒唐無稽な言説に踊らされないということは言えるかもしれません。
それから私は、もともと大学1年の時に、学校の寮に入っていたので、この時には親しい友だちがすでに何人もありました。なので特に新たに友だちを欲していたりとか、孤独を感じたりしていたわけではありませんでした。これも良かった点だと思います。一人で見知らぬ土地へ来て、なかなか友だちができなかったりとか、あるいは失恋直後など、より孤独を感じている状況だったりしたら、また違ったかもしれません。
実は、こういった宗教団体の名前を伏せた偽装サークルの勧誘というのは、エホバの証人以外でも多くの新宗教団体がやっています。一人暮らしの寂しさから、いつの間にかカルト教団に取り込まれ、マインドコントロールされてしまえば、家族の言葉も耳に入らなくなってしまいます。マインドコントロールを解き、社会復帰するのは容易ではありません。
苦労して志望の大学に入ってホッとしたのもつかの間、大事な我が子が危険な宗教に足を踏み入れてしまったなどということのないように、親の側もその危険性についてよく認識し、家族でもよく話し合っておく必要があると思うのです。